高齢者の罪と罰

[その1] 80代

「お庭がきれいになっているけど私頼んでないわ。いくらですか?。」「55,000円です。」「勝手にやってるので払えません。介護センターの人に言われました。記憶に無いなら払わないでと。」「隣の人が紹介してくれたので証人はあります。」「年金生活なので大変な額です。」「払わなくてもいいです。」「いいの」「墓場まで借金を抱えて行って。」「・・・。」


[その2] 80代

「お前のところは銘石、銘木を買うと看板に書いてある。うちの銘石、銘木を買ってくれくれ。」「オタクの石や木は無価値です。」「買った時は200万払った。いくらでも良いから買ってくれ。」「撤去処分に100万 円掛かかります。」「その値段で買え。」「100万円はあなたが払うのです。」「この銘石持っていけ。」「買うから持ってきて。」「いくらで?。」「1,000円で」

「どうやって運ぶ?」「業者頼んで運んでください。」「何処へ?」「秋田県の山中へ。」「誰が経費を払う?」「お宅が。」「・・・。」


その3 70代

「両隣の剪定作業は済んでるけどどうして私の所はしてくれないの?。」「他所の業者さんに見積もりして貰いましたか?。」「したけど年金生活の私たちは高すぎて頼めないです。」「私の方もその金額では安すぎてできません。」「・・・」


その4 70代

「ごほごほーん」「ごほごほ」「社長あんまりいい咳き込みでないね?」「昔からだよ」「タバコ辞めたら」「15の時から吸ってるのだ。やめられるか」「だいぶひどいね」「まぁ癌だからなぁ」「この残土、廃材、コンクリートの山、早く片付けたら。」「なにこんなものすぐ片付くよ」

この解体業者は間もなく亡くなった。残された遺族はそのゴミの山の処分に途方に暮れてしばらく泣いていた。


その5 90代

「植木屋さんうちのも剪定してくれよ。」「はい。税金入れて110、000です。」

「前回は80,000円ぐらいだった。」「はい3年前のその代金はまだもらってません。合わせて190,000円です。またすっとボケられれては困るので今回は前金でお願いします。」「・・・」


その6 80代

「草取りをしてほしい。」「除草剤を使っていいですか?」「除草剤は体に良くないので手作業でしてほしいです。」「江戸時代でないので手作業で草むしりする人はいません。」「何で取るんですか?」「機械で刈るか、除草剤を散布します。」「体に良くないので手作業でお願いします。」「手作業は体に良くないのでお断りします。」「・・・」


その7 70代

「職人さんは一日おいくらですか?」「まぁ20,000円程度です。」「うちはいくらでやれますか?」「はい、55、000円です。」「何日来ますか?」「半日作業です。前の業者さんは

どうでしたか?」「5日来て50,000円です。」「そちらがいいですよ今時貴重な職人さんです。大事にお付き合いしてください。」「・・・」


その8 作業員の余禄

「社長今日もチップ頂きました。」「良かったな、ところで今月はいくら貯まった。」

「44、000円です」「4人に分けてあげなさい。」

「ありがとうございます。月末のチップはみんな喜んでいます。」

「世の中鬼もいれば神もいる。作業に神対応すれば向こう側も同じように対応してくれる。世の中、万時塞翁が馬だ。」「なんですかそれ?」「人間的万事塞翁が馬、検索してご覧。」



かすかに金木犀の香りがする。




みやぎ野造園

1977年宮城県仙台市で開業。現在は富谷市明石にて営業。 近年は庭石の撤去工事が多く、その石を破砕して再利用した お洒落なロックガーデンやガーデニングに力を入れています。