放任、放置
毎年、春になるとさまざまな野菜の苗が出回る。
私のところの職人もそれぞれ好みの苗を買ってきて空いてる敷地に植える。
毎日のハードワークで植えた野菜など放置してしまうが、時折覗くと茄子もトマトも胡瓜も生え放題そのジャングルのような中から収穫作業は甚だむずかしい。
野菜で放置してでも収穫できるものもある。カボチャ、地這い胡瓜などの蔓もの。ジャガイモ、玉葱、カブ、自然薯のような根菜類など植え付けてしまえば収穫するだけで草取りなどの作業はいらない。
農作物を栽培する人の中には無農薬栽培を語って放任、放置栽培してる方がいる。
雑草一本もない広大な田圃に一画だけヒエ、アワなどの雑草に隠れて稲が見えるところがある。耕作放棄したのでなくいわゆる放任栽培なのである。もちろん収量はわずかである。
家庭菜園でも放置栽培してる人がいる。私たちと同じく忙しく日々を暮らし野菜のことをすっかり忘れてしまってるのだろうが中には雑草は支柱の役目としてまたは害虫避けとして役に立っていると雑草と共存を語る人もいる。いずれも収穫量は少ない。
どこの家庭も休日には焼肉や回転寿司、ファミリイレストラン店に繰り出す。無農薬栽培を語る主の家族も雑草と共存している人々も皆農薬に守られた形のいい野菜や果物を美味しいと言って口にしている。
桃や林檎、葡萄など人間だけが美味しいのではない。虫さんだって大好物なんです。大量の農薬散布の農産物に虫さんが寄りつかないものが店頭並び調理される。
キャベツや大根など放置しては無惨な姿でとても食べるのに勇気がいる。
プラムやリンゴも食べ頃のものを齧ってみると虫さんが顔を出してきてとても飲み込めない。
リンゴ狩りで食中毒したニュースがあった。害虫のいない果物であればそれはあり得る。
一億人を超える人口の日本で自給率は30パーセントほどである。その自給率の高いのはお米であり無農薬無肥料を語っては自給率がゼロパーセントに限りなく近くなる。
日本人の平均寿命が80代後半になる時代に農薬と化学肥料はどのような瑕疵があるのだろう。
確かに過去にはドジョウ、イナゴが消えた時代があった。それらを食べる野鳥も消えた。野鳥が消えては人体にも少なからず害があるとして強力な農薬使用を自粛した。
昔は手作り捕虫ネットで大量にイナゴが捕れ、買取り業者に渡してお小遣い稼ぎができた。
イナゴの佃煮があった時代である。あの時代ほど生息はしていないが今は確かに至る所にいるようになった。カエルもドジョウもたくさん見かけられる。
農作物を提供する方はイナゴやドジョウ、紋白蝶が絶滅しない程度の薬剤を使い人間に害が及ばないよう工夫している。
日本の自給率が下がれば当然国外産のものを食することになる。中国のように工場排水汚染の河川の水を使ってる農場の産物は果たして安全な食べ物なのか。
過去にカドニウム汚染米を工業用として中国から輸入されその米穀商がコンビニのおにぎりの安売りに混入して問題になった。従業員の内部告発から露見した事件だが輸入農産物はどこまで信用できるか誰もわからないのである。もちろんその米穀商は倒産した。
放置、放任で目に見える虫食い野菜、果物と果たして何が使われたかしれない形の美しい輸入農産物。多くの人はどちらを選ぶのだろうか。
農業者も利益第一であり採算のため農薬の使用は当然として害虫と言われる昆虫、野鳥、そして人間の食の安全に配慮している生産者の民度の高さは日本の誇れる文化だ。
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